ふととなりを見ると、1人の外国人男性。年は60歳をむかえているだろうか。ブルーのジーンズに赤いセーターがよく映える。頭は少し寂しい。目は大きく青い。若かりし頃は間違いなくイケメンだっただろう。
少し歩いてきたのか大きなバックパックを脇に置き、コーヒーとケーキを楽しんでいた。あのくらいの年で1人の観光客は珍しいので、少し観察してみる。奥さんときているのだろうか。しかし、そそくさとケーキを食したので、一人で来ているのだろう。
目が合う。にこっとすると、怪しまれているのか笑顔はなかった。しかし、一向に観察は続けた。
ケーキを食べ終えた彼は、バックパックから地図と路線図を取り出す。そのご老人には都内の路線図は細か過ぎるらしい。丸く、べっこう飴の色のフレームのメガネを取り出す。これがよく似合っていらっしゃる。右手には黒のボールペン。
真剣に地図を路線図とにらめっこをし、黒のボールペンで丸をつけていく。2つ3つ文字を囲んだ。どこだろう。しかし、隣の席の僕にも字が小さく覗くことはできない。でも、公園など、目印になるような場所からは少し離れた場所であることはわかった。
しかし、おじいさんの広げた地図は大きい。字も細かい。この土地に育った身としては、あんなにも場所名はあるのだなあと驚いた。その地図は、おそらく外国人観光者用のもののはずだから、訪れる価値のあるところばかり載っているのではないだろうか。
ぼくは、どれだけの場所に足を運んだのだろうか。都民は東京タワーにいかないのと同じ心理が働いているに違いない。それで、行かない有名どころはかなりある。あるいは、まあそのうち行こうかな、と思いそのまま忘れ去られてしまった所もある気がする。
となりのオジイさんは、楽しそうに地図を見ていた。細かい路線図に少し苦戦しながら。彼の少しくたびれた革靴は、この旅行中にどれだけの土地、街へゆくのだろうか。
自分のホームタウンは、何よりも知っている自負があるように思える。しかし、なれというよりも馴染んでしまい、目新しさに気がつかなかったり。または、都内になればGINZAなんかは自分は場違いかしらん、と勝手な田舎っぽさが僕を踏みとどまらせる。
1人できた、となりのおじいさんは僕の知らないTOKYOを探しにバックパックを背負う。帰り際に目があっても、やっぱり不可思議な顔をされた。。
0 件のコメント:
コメントを投稿