2015年9月27日日曜日
I am an old-type person
Japanese Only...
少し針を戻す。3年前の夏、僕はとある人から誕生日プレゼントをもらった。その人とは少し関係がギクシャクしていて、というか僕の方が一方的に避けていたのだ。だからこそ、その包みをもらったときは、驚いたと同時に「開けるものか」という思いが強かったのだ。
それでも、人の好奇心は抑えられないようだ。その場ではバックパックに入れてたものも、家に帰るとすぐに封を開けていた。
入っていたのは万年筆と手紙。万年筆を握ったのは初めてだったが、何分仕組みがわからない。カートリッジ式だった。とにかくカートリッジを少し強く入れると、鈍い音がして刺さったのだとわかった。
だけど、一向にインクが出てこない。握り方が良くないのか、何が原因なのかよく分からない。30分もすると、「ああ、不良品を引いたのだ」と確信した。もらった人との関係が頭に浮かんだ。「あの人からもらったからだなあ」 そうも思った。ゴミ箱にはいかなかったけれど、必然的に戸棚にしまいこんだ。それが初対面だったのだから、いい印象を抱かないのは想像にたやすい。
ときは流れ三ヶ月ほど経ったときだろうか、それとも半年ほどだろうかよく覚えていない。何がきっかけだったのかもよく分からないが、机を開いてもう一度だけ取り出してみようと思ったのだ。それだけ経ったのだからインクは固まっていた。だけど、インターネットで情報をみて、洗いそしてもう一度インクを刺してみた。
インクは流れない。
それが悔しくって、箱の中に入っていた保証書を見る。保証期限はまだ間に合う。それを握りしめてお店に向かった。幾分、初めてのものだから自分が壊したんじゃないかなどとドキドキしながらお店の人に相談すると、同じものときちんと交換してくれた。
家に帰って、改めて取り出し握り締めてみた。きちんとインクが出た。いらない紙の上を走らせてみた。きもちいい。鉄ペンだったけれど、今まで味わったことのない書き味だった。よく見てみると、インクが出るときにペンの先が離れる。その間からすーっと青い液体が出てくる。素直に、こんなに描きやすいのかと感動した。
ペンが走る様子を見ながら、「ああ、あの人ときちんとまた話ができるかもしれない」そう思った。自分でもなんでそんなことを思ったのかはわからない。だけど、そんな気がした。そうして、その人の名前を書いてみた。
その人は留学をしていて一年は帰ってこないことは耳にしていた。とにかくそれまで、ペンで遊んでみた。ノートを取るのが楽しい。今まではPCを持って行っていた生活がガラリと変わった。そして、いつしかこのお礼をキチンとしなければいけないなと考えるようになった。
そんな生活の変化を経験し、毎日涙するような毎日を経てときは去年の9月まで早送りされる。キャンパスで、プレゼントをくれたその人と逢った。あちらはまだ気づいていないように思う。声をかけようか頭で悩んでいるうちに、足は勝手にその人の方向へ向かっていた。「留学どうだった?」第一声はそれだった気がする。
留学を経たその人とは何分話しただろうか。おそらく正味20分ほどだったと思う。大した話はしていない。たぶん、「俺も海外に行くことにした」そう伝えていた気がする。そのときは、話しかけたその反動で万年筆のことは頭から飛んでいって忘れてしまっていた。
留学をすることは決めたものの初めてのことだらけでさっぱりわからない。英語のテストは受けないといけないし、卒論も書かなければいけない。エッセイなんて何から手をつけていいことやら。そんな状態だった。
だけれど、自分の思考を吐き出すのにPCではなく、常にノートと万年筆を持ち歩いていた。卒論の執筆中もとにかく握って書きまくっていた。とにかくとにかく書いた。頭の中を整理するように。そんな中で光が見えて、なんとか締め切りに間に合った。
エッセイもそうだった。
お前は何者か
お前は何者か
お前は何者か
とにかく問われるのはこの問いの一点だったように思う。今も自信は正直言ってない。だって、わからないことだらけだもの。だけど、ペンと寄り添ったあの半年があったから自分はこれができて、これはできない。ここは足りない。自分のことはよーく説明できるようになったと思う。
いつも一緒だった。だから、自分の卒業祝いに自分で買ってみたいと思った。金ペンなんて買えない。だけど、今度は自分できちんと選んでみたかったんだ。伊東屋に行く。お姉さんに自分の筆圧や太さの好み、そして予算を伝えた。周りはみんな40前後の方達で浮いていたのは言うまでもない。
いくつか試すうちに、自分が当初目星をつけていたものとは相性が良くないのがわかった。そして、一本お姉さんが提案してくれたのが LAMY Studio 。みた瞬間ペンの美しさに息を飲んだ。少しペンを走らせると重さもぴったりで「自分に合うペンは見つかるもんなんだな」そう思った。予算はギリギリオーバー。だけど、買わないと後悔する気がしたので頑張って買った。
今回の留学中もそのペンは相棒になってくれている。今どき万年筆を握るやつなんてそうそういないだろう。だけど、このペンと紙に向かえば何か解が出てくるような気がしてならない。ちなみにノートは LEUCHTTRUM 1917。これもドイツ。
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